5. 湯村温泉->鳥取
昨日湯村に着いた時点ですでに真っ暗だったため、朝8時過ぎから温泉街を散策した。
温泉街と言っても城崎のように川を中心に連なっているというわけではなく、荒湯と呼ばれる中心地の周囲に立地しているタイプだ。
湯村温泉は、荒湯という98度の源泉に玉子を沈め、温泉卵を作るのが有名なので、それをやろうかと思ったが、一番安いやつで玉子3個つだったので諦めた。そんな多くいらない。1つあれば十分だった。
荒湯を中心に温泉街を散策したので、車で浜坂に向かった。
日本海の荒波を感じることができた。
途中、浜坂港で水産物の販売店に立ち寄った。そこで生きた松葉ガニを買った。
ここからは鳥取方面に進む。景色が見たいのでもちろん旧道を走った。トンネルの前後に旧道がある部分も旧道を走った。
地図を見ると、居組と東浜の間に東浜居組道路というバイパスがある。この区間だけ飛び地でバイパスがあるのが謎だったが、迷わず旧道の七坂八峠に進んだ。
七坂八峠はすごい道だった。確かに全区間センターラインが引かれているので幅が狭いわけではないがとんでもない急勾配とカーブの連続だった。景色はよかった。
峠のピークを越えて鳥取県に入った。今まで登りだったのが下りになった。
私はカーブを曲がろうとした。あれ?すぐに違和感の正体に気づいた。後輪がグリップを失い滑っていたのである。
七坂八峠は先ほど説明した通りとんでもない勾配とカーブの峠だった。最悪の結末は崖に激突か、海に落下である。どちらも死を意味していた。
私は過去に、自宅近くで急ブレーキと急ハンドルを同時にして、車を滑らせ横転させてしまったことがある。その時のことが走馬灯のように浮かんだ。
まずアクセルとブレーキの両方から足を離した。急な減速は厳禁。知識の上では横転事故の前から知ってはいたが今回はそれを実践することができた。そして左カーブで後輪が滑っていたので、すこしずつハンドルを右に切った。これも急に切ってはいけないと横転事故で身をもって知っていた。滑り始めてから5秒、復帰動作を始めてから3秒ほどでグリップを取り戻した。どこにもぶつけず、擦ることなく完全にコントロールを取り戻すことができた。とても長く感じた5秒だった。対向車線にほとんどはみ出すことなく自車線内で収まっていて、反対から車が来ることもなかったが、もし反対から車が来ていたらパニックになっていたに違いない。
ここでストリートビューで現場検証をしてみたい。車種はスズキのスイフト(FF)、条件は路面ウエット、急な下り勾配、タイヤはスタッドレスだ。よく考えると、この時点で後輪がグリップを失いやすい要素満載だ。
まず滑り始めがだいたいこの位置だ。
次に、カーブの開始時点を確かめてみる。
直角に近いカーブに見える。続いて滑り始めの直前ポイントだ。
恐らくここでカーブが長いことに気づき、無意識にブレーキを踏んで滑り始めたと思われる。
そして、カーブの終わりを過ぎたあたりでグリップを取り戻した。冷静に対処することができたが、心拍数が急上昇していた。恐らくアンダーステア気味だったのが、無意識にブレーキをかけたことによりオーバーステアになったのだろう。
そして東浜居組道路という飛び地でバイパスがある理由を一瞬で理解した。
東浜を過ぎると国道は内陸の方に行く。時間的にあまり余裕がなくなってきたので高速道路を使って鳥取市内に向かい、駅前でレンタカーを返した。
6. 鳥取->大阪
鳥取から伊丹空港に行かねばならない。選択肢は一つしかない。特急スーパーはくとだ。
特急スーパーはくとは、京都駅から倉吉駅の間を東海道本線・山陽本線・智頭急行線・因美線・山陰本線経由で走っている特別急行列車だ。車両は全て智頭急行のHOT7000を使用している。ほくほく線を最高速度160km/hで走る特急はくたかは無くなってしまったが、ここでは振り子を使いながら最高速度130km/hで爆走するディーゼル特急を楽しむことができる。
前日夜にe5489で座席を確認すると、予約時にはすでに先客がいた5号車1D席に空きが出ていた。その席に変更した。こうして前面展望席を確保したのである。
今日こそ昼飯を食う。2日連続昼飯抜きだったので、そう強く誓っていた。セブンイレブンで弁当を買うことができた。が、電子レンジで温めて食う前提のチルド弁当を、温めてもらうのを忘れた。冷たいまま食べた。おいしくなかった。
因美線は鳥取駅の高架から降りるときに105km/hほど出しただけで、他の区間はガタンゴトンと音を立てながら走っていたが、智頭駅を過ぎて智頭急行線に入った瞬間一変した。
軌道はロングレールだし、保線状況も明らかにいい。なにより振り子を使って125km/hほど出している。おまけに展望座席だ。最高の乗り物だった。
鳥取駅から約2時間半。大阪駅に到着した。大阪環状線に乗り換えて新今宮駅に向かった。生きた蟹を持ったまま。
新今宮から堺筋を歩いて日本橋に向かった。生きた蟹を持ってPCパーツや同人誌を見に行った人なんて前例があるのか?
難波から伊丹空港行きのバスに乗ればよかったということに気づいたのは、御堂筋線で梅田まで行き、阪急で蛍池に着いてからだった。
伊丹空港に到着した。行き同様乞食をしてから、早めに搭乗口に向かった。
NH 32便は、5名オーバーブッキングをしているようだ。1万円か7500マイルの協力報酬がもらえる。生きた蟹を持っていなければ協力したかったが、一刻も早く帰って調理しようと思っていたので乗った。気流が安定しないという理由で冷たい飲み物しかもらえなかった。
無事に羽田空港に着陸した。自宅への電車も何事もなかった。
家に帰り、蟹が入ったスチロールバックを開けた。蟹はまだ生きていた。蟹の身を取り出してぬるま湯と氷水につけて刺身にした。蟹の刺身なんて初めてだ。残った殻は味噌汁に、蟹みそもいただいた。
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